新着情報1件
 

■活動報告履歴
2023年2月 報告27
◆第5回「SE勉強会」

2019年7月 報告26
◆第1回「SE勉強会」

2019年2月 報告25
◆第8回ビジネス懇話会

2018年10月 報告24
◆第12回スターリングエンジン講演会

2017年2月 報告23
◆平成29年度ビジネス懇話会

2016年10月 報告22
◆平成28年度第10回スターリングエンジン講演会

2015年2月 報告21
◆第5回ビジネス懇話会

2015年10月 報告20
◆平成27年度第9回スターリングエンジン講演会

2014年12月 報告19
◆平成26年度第8回スターリングエンジン講演会

2014年12月 報告18
◆第1回一色尚次賞発表
 スターリングエンジンの発展に向けて

2014年5月 報告17
◆2014環境展・地球温暖化防止展出展

 
   日本スターリングエンジン普及協会活動報告No.27
 
◆第5回「SE勉強会」報告          
   第5回SE勉強会が2月22日芝浦工業大学 豊洲キャンパス本部棟2305号室で開催されました。 約3年振りの対面方式による勉強会の再開であったこと、および開発対象 “SE-PV電源車” の実地見学が 行われたこともあって、熱気溢れる講演会となりました。
   本講演のテーマである“Li-ionバッテリー搭載移動式SE-PV電源車と今後の開発計画”は、 本年2月トルコにて発生した大地震並びに近年の日本でも約10年周期で繰り返されている大地震を念頭に、 災害発生時の対策として如何に最小限のライフラインを確保するか、という観点から進められています。
1. 開催日時 令和5年2月22日14:30〜16:30
2. 会  場 芝浦工業大学 豊洲キャンパス 2305号教室
3. テ ー マ 「Li-ionバッテリー搭載移動式SE-PV電源車と今後の開発計画」
4. 講  師 芝浦工業大学 工学部 電気工学科 教授 高見 弘
講 演 要 旨
1. 災害に対する備え:
  災害発生時への対応として 日本政府(首相官邸) が勧めている食料や生活必需品の備蓄は、最低限3日分、大規模災害を考慮した場合は1週間分が望ましいとされている。 その内容は下記(1)以下をご参照下さい。
(1) 飲料と非常食(少なくとも3日分)
飲料水3L/(1人・1日)、ご飯(アルファ米など)、ビスケット、板チョコ、乾パンなど
(2) 生活必需品(必要と思われる量をストック)
トイレットペーパー、ティッシュペーパー、マッチ、ろうそく・カセットコンロ、 スマホの予備バッテリー など
(3) 生活用水(ポリタンクやバスタブに溜めておく)
台所用水、トイレ用、その他
(4) 避難場所(避難場所を事前に確認、家族で共有)
安全かつストレスの少ない滞在場所・連絡が取れない時の集合場所として
(5) 非常時の連絡先(家族・知人と共有)
家族や知人への連絡先、スマホ以外の連絡手段の確保と共有(災害用伝言ダイヤル171など)
2. 予測不能の自然災害が起こったら:
(1) 普段当たり前に使っているものが使えない!
(2) 電気・水道・ガスの供給が突然ストップする!
(3) 供給停止状態の電気・水道・ガスの復旧がいつになるかも分からない!
    等々の状況になりかねません。
3. SE-PV電源車の紹介:
  災害発生時に引き起こされるライフライン危機への解決策の一つとして SE-PV電源車の導入が非常に有効であることを以下に紹介します。
概  要
  木質バイオマスペレットを燃料とする1kWのスターリングエンジン発電機(FPSEG)と 最大600Wのソーラーパネルを車両に搭載し、 さまざまな場所で電力とお湯を供給できる移動式エネルギー基地です。 被災地の避難所や一般家庭の庭先などにも簡単に移設でき、Li-ionバッテリーに充電することで、 アーバン・エコ・モビリティ対応の仕様となっています。
  外観を図-1 に示します。

図-1 SE-PV電源車全景
【燃料】 木質バイオマスペレット(カーボンオフセット)・・・太陽光や風力に比べ安定供給、地域木材、間伐材などの活用
【動力】 スターリングエンジン(熱源を選ばない、排ガスがクリーン、高効率、低振動・低騒音)
【特徴】
1時間当たり3kgの燃料で1kWの電力と45℃・200Lの温水を供給可能
最大600Wのソーラーパネルにより発電可能
Li-ionバッテリーにより安定で効率的な電力供給が可能
バイオマスペレット燃料の投入量とブロワの送風量制御で燃焼炉の温度が制御される
全装置はモジュール化されており,移設や現地(例えば被災地の避難所や山間部,または,一般家庭の庭先) での運用が容易
【能力】 約1時間の運用で生成されるものを図示すると・・・

図-2 SE-PV電源車運用効率
【運用例】 例えば被災地の避難所で・・・
天気の良い日中はソーラーパネルで発電し、 余った電気はLi-ionバッテリーに蓄えて、夜や雨の日に備える。
夕食の準備のときに2,3時間程度木質ペレットを燃やして発電し、 約45℃〜50℃の風呂1杯分程度の温水と生活用水を作る。
夕食後は食器洗いやお風呂・シャワーなどに使う。 また、被災現場ではガレキの撤去や救助のための電源として使える。
4. システム構成  
   SE-PV電源車のシステム構成と各構成ユニットの組み立て外観並びに搭載状態を、図-3 〜 図-5 にそれぞれ示します。

図-3 SE-PV電源SE-PV電源車のシステム構成図

図-4 構成ユニット外観

図-5 各ユニットのSE-PV電源車への搭載
5.計測・制御システム
   SE-PV電源車の計測・制御システムは、スターリングエンジン制御部を中心として、 その周辺にスターリングエンジン本体、ソーラー発電部、大容量Li-ionバッテリー、タッチパネル、 外部ネットワークとのインタフェース等を配置した形で構成されています。 その構成を図-6に示します。

図-6 計測・制御システム機能ブロック図
5-1  FPSEG
  フリーピストン型スターリングエンジン。 出力は1kW, 50Hzです。
5-2  ソーラー発電部
  ソーラーパネル6枚(最大)とソーラー充電器から構成されています。出力電圧:DC48V, 最大出力500W(実測値)がその仕様・性能です。ソーラー充電部に蓄えられた電気は、マスターPLCからの指示に従って 大容量Li-ionバッテリーに送られ、蓄えられます。
   スターリングエンジン(SE)発電とソーラー(PV)発電両者の発電能力の比較を図-7に示します。
   (注)BT:Li-ionバッテリー


図-7 木質バイオマス燃料スターリングエンジン(SE)とソーラー(PV)の発電実験
5-3  FPSEGコントローラ
  スターリングエンジン(FPSEG)を制御するコントローラです。 スターリングエンジンの出力電圧AC230Vは、一旦AC/DCコンバータによってDC400Vに変換された後、DC/DCコンバータを 介してDC48Vに再変換され、大容量Li-ionバッテリーに充電されます。バッテリーが過充電になる恐れがある時は、 スターリングエンジンの出力は、FPSEGコントローラに接続された放電抵抗によって消費されます。 なお、放電抵抗として温水ヒーターを用いれば、発電電力を有効に利用できます。
5-4  マスターPLC
  マスターPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)は シーケンス制御用プログラムコントローラとリレー回路などの組み合わせで構成され、SE-PV電源車の運用のための中枢部分を担っています。 本システムの動作・運転に必要な各種情報(周囲温度、加熱部温度、燃料消費量、流水量、発電量、消費電力、Li-ionバッテリーの温度、補機運転状況等々) の信号をセンサー回路から入力し、SE-PV電源車の運用に必要な制御信号を発生して、リレー回路等を通して各ユニットを制御する装置です。 主な制御対象は、FPSEGコントローラ、ソーラー充電部、補機、保護回路(過熱保護・無負荷保護・過電流防止・過負荷運転防止等) 及び通信回路(外部ネットワークとの接続)が相当します。 このようにPLCは安全・安定運用の要となるため、万一に備えてスレーブPLCが用意されています。
   マスターPLC、スレーブPLC共に運転状況等を記録するためのSDメモリを有しています。 また、操作員からの指示を受けるためや操作員へ運転状況を知らせる、 マンマシン・インタフェースとして タッチパネル が採用されています。
5-5  スレーブPLC
  スレーブPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)は シーケンス制御用リレー回路を持たない以外はマスターPLCと同等の機能を有しており、 通信回線(LAN)を通じてマスターPLCに接続されてSE-PV電源車の遠隔による監視や操作を可能にします。 また、スレーブPLCは、マスターPLCの状態を監視し、異状があればSE-PV電源車の運転を停止させる役目もあります。
  運転・稼働記録が記録されるSDメモリは、その取り外しがマスターPLCに比べて容易なので (マスターPLCは制御盤内にあるのでSDメモリの取り外しが困難)、運転状況の確認も直ちに可能となっています。

図-8 マスターPLC

図-9 スレーブPLC
5-6  補機用コントローラ
  今回開発されたSE-PV電源車の第一の目的は、災害発生時に直ちに被災地に向かい、 ライフラインの基本となる、(1)電気を供給する、(2)生活用水の一部を加熱して温水を供給する、と言ったサービスを提供することにあります。 SEの運転に必要な補機、@ポンプ、Aブロワ、B燃料フィーダは、マスターPLCからの指令信号に従って 補機用コントローラによって制御されます。
  スターリングエンジン(FPSEG)の加熱部への熱供給のため、燃料フィーダの燃料投入量とブロワの送風制御による 燃焼炉の温度制御も、この補機用コントローラの重要な役割の一つです。安定なSE発電を維持するために、 燃焼炉の温度はセンサ回路を通してマスターPLCにフィードバック制御されます。
5-7  AC/DCコンバータ・DC/DCコンバータ
  スターリングエンジン(FPSEG)の発電電力は AC230V/50Hz であるため これを一旦整流し、DC400V の電力に変換され、更にLi-ionバッテリーの定格電圧 DC48V に変換して充電しています。 これらの電気エネルギーの変換動作を行っているのが AC/DCコンバータと DC/DCコンバータです。
5-8  インバータ
  SE-PV電源車での発電は全てDCに変換されてLi-ionバッテリー に蓄電されているため、この電力を外部の機器に供給する場合にはAC電力に変換する必要があります。 これを担うのがインバータ(DC/ACコンバータ)です。
5-9  ソーラー充電部
   最大出力100Wのソーラーパネルを最大6枚をSE-PV電源車のルーフに設置出来ます。 ソーラーパネルの出力は安定ではないのでソーラー充電部で48Vに変換し MPPT制御 (Maximum Power Point Tracking:下記注参照) によってLi-ionバッテリーに蓄電します。
注: 最大電力点追従制御方式。太陽電池が発電する時に出力を最大化できる最適な 電流×電圧の値(最大電力点)を自動で求める制御のこと。 太陽電池は天候の変化等環境の違いによって最適動作点が変動するので、 これを自動的に最大出力が得られるようにする制御のことをMPPT制御という。
5-10  大容量Li-ionバッテリー
  スターリングエンジン並びにソーラーパネルによる発電量が 使用電力を上回っている時は剰余電力を蓄え、夜間等スターリングエンジン発電量のみでは供給が追いつかない時は当バッテリーから 電力を補給することになります。 当バッテリーの定格は、48V、100Ahなので、iPhone8 (3.82V, 1.821Ah) の約690台分の充電能力を有していることになります。

図-10 パッケージ化されたLiイオンバッテリーモジュール
5-11  センサ回路
  センサ回路は構成ユニット各部の温度や電流値などの物理量を測定し その結果をマスターPLCに送っています。 マスターPLCはその測定量に基づいた判断を行い必要な制御信号を各ユニットに送っています。 その目的は二つあり、一つは測定値が予め定められている設定値に近づくように、もう一つは測定結果によって 安全・安定なSE-PV電源車の運用が出来るようにするためです。
5-12  タッチパネル
  マスターPLCに対する指示、あるいは マスターPLCや構成ユニットの稼働・制御情報を知るためにタッチパネルが使われています。 タッチパネルは、各種運転状況に応じた画面に切り替えて表示・操作することが可能です(図-11〜図-13参照)。

図-11 タッチパネル(運転表示と操作)

図-12 タッチパネル(燃料表示と操作)

図-13 タッチパネル(記録表示)
6.今後の開発計画
  次なるステップへの目標としては;
@ バーベキューの炭を燃料とした装置
A 燃焼炉温度の最適制御および排熱の再利用によるエネルギー利用効率の増大
B Li-ionバッテリーによる蓄電電力の配給システムの構築
C Li-ionバッテリーによるアーバンエコ構想の実現
D 自動化および現地で即運用できるシステムの構築
E 遠隔による制御および監視
  をそれぞれ考えており、具体的には次の3つのプロジェクトを立ち上げて実行しております。
6-1  灯油・天ぷら油を燃料とするFPSEG発電
SECエレベータ(株)との共同研究
ステータス:実験段階(SEの制御と運転法の確立)

図-14 実験装置全景

図-15 燃焼系と電気系の流れ
6-2  木質バイオマスペレットを燃料とするフリーピストン型スターリングエンジン発電
ダイエーコンサルタンツ(株)・プロマテリアル(株)との共同研究
図-16 試作・評価品
ステータス:試作品完成、評価段階
SEGコンバータ(2号機)は東京精機(株)との共同開発
現在の木質バイオレスペレットから将来的には、木質チップ、薪、廃材等々、 熱源の対象を拡大していくことを計画しています。これが実現出来れば用途は無限となり、 例えば、戸建ての家にコジェネレーションシステムとして利用することも可能となります。
6-3  バーベキュー用炭を燃料としたスターリングエンジン発電装置
芝浦工業大学プロジェクト2 (2022年4月スタート)
ステータス:試作品開発中(設計段階)

図-17 バーベキューの炭を燃料とした装置(開発中)
 
▲TOPへ    
 
 
Copyright (C) 日本スターリングエンジン普及協会