◆平成26年度第8回スターリングエンジン講演会開催
…電気事業法改正とスターリングエンジン発電ビジネス… |
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2014年12月2日 | |
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第8回スターリングエンジン講演会が平成26年12月2日(火)都道府県会館で開催されました。
講演会に先立って、「第1回一色尚次賞」の授与式が行われました(詳細は
活動報告No.18 を参照)。
今回は、電気事業法改正により、10kW未満のスターリングエンジン発電設備が“電気事業法施行規則”
及び“発電用火力発電設備に関する技術基準を定める省令”に規定されたことから、基調講演として、
同改正に携われた経済産業省電力安全課・大神広記課長補佐より、その経緯について詳しい説明がありました。
引き続いて、この規制緩和を受けてスターリングエンジンビジネスに関連するテーマの講演を行いました。
参加者は総勢75名でした。
以下に演題と講演者を記します。
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○ |
第1部 一色 尚次賞受賞記念講演 |
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α+型による10kW級間接加熱式低温度差スターリングエンジンについて |
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竹内 誠 氏 (潟Tクション瓦斯機関製作所 代表取締役) |
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| (2) |
「薪ストーブ発電システム」のビジネス展開 |
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工藤 武和 氏 (潟Wェー.ピー.イー 代表取締役) |
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○ |
第2部 定例講演会 |
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| (1) |
スターリングエンジン発電に関する電気事業法の改正について |
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大神 広記 氏 (経済産業省 商務流通保安グループ電力安全課 課長補佐) |
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| (2) |
技術基準(省令)とスターリングエンジンの製品化 |
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杉山 徳義 氏 (NPO日本スターリングエンジン普及協会理事)
樋口 彰 氏 (NPO日本スターリングエンジン普及協会理事) |
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| (3) |
“排熱利用スターリングエンジン”のビジネス構想について |
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福本 吉起 氏 (テラエナジー 代表・本会理事) |
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| (4) |
1kWスターリングエンジンによるバイオマスCHP事業 |
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齊藤 正倫 氏 (潟vロマテリアル 代表取締役・本会理事) |
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<各講演の概要> |
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○ |
第1部 | |
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| 竹内 誠 氏講演 | |
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最近南相馬市大町地域交流センターに設置された、“熱媒利用による10kW級の木質バイオマスを
熱源とする低温度差型スターリングエンジン発電システム”についての説明があった。
特徴は熱媒加熱器伝熱管温度が300℃程度であることによる高温腐食の防止、
熱媒加熱器による自由設計が可能なための清掃等のメンテナンスも容易である、さらには
ボイラーとエンジン本体の分離設置が可能なため、エンジンの振動によるボイラーへの悪影響の防止等が
可能となった、こと等である。なお同システムの熱効率は15%である。 |
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| A |
| 工藤 武和 氏講演 | |
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非常用防災システムとして、長野県に多いカラマツ等の間伐材を燃料としてすでに普及しているカラマツストーブを
母体に200W級スターリングエンジン(MOMOSEエンジン)を組み合わせた、
“薪ストーブ発電システム”の開発経緯について、とくにH25年度の“上田市新技術開発事業助成金”に基づいて
システムを完成させて同年10月の上田市産業展へ出展し実運転試験を実施し好評を博したとの説明があった。
今後の展開としては、まず学校等災害時緊急避難場所への薪ストーブ発電システム導入を目指すとともに、
温室栽培等の熱源、照明電源への活用等、間伐材・枯れ木といった木質バイオマスの有効活用による
山林の整備に貢献するといった観点からの普及促進が考えられることを強調した。
ちなみに燃料となる薪の供給について、すでに長野・山梨においては宅配サービスが開始されたことにも触れられていた。 |
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○ |
第2部 | |
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| @ |
| 大神 広記氏講演 | |
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今回改正になった電気事業法に関して、まず電気工作物の分類の説明があった後、10kW未満スターリングエンジン
発電設備は、そのうちの一般用電気工作物に該当すること、また一般用電気工作物は、保安規程の届出、
主任技術者の選任といった事業用電気工作物に対する法的義務は課されていない、つまり住宅用太陽光発電設備
(但し50kW未満)と同等の発電設備となるという規制緩和がなされたとの説明があった。
続いて、同改正の背景・検討結果の概要説明があった。スターリングエンジンはこれまで電気事業法上
火力発電設備に該当するものの、“電気事業法施行規則第48条第4項”で規定している小出力発電設備に
該当しないため、“電気事業法第38条第1項”に規定する一般用電気工作物にはならずに事業用電気工作物
(自家用電気工作物)として区分されていた。また実用化例が乏しかったことから、
スターリングエンジン発電設備固有の技術基準が整備されていなかったとの実情説明が付け加えられた。
そして今般スターリングエンジン発電設備の実用化例が出てきたことを踏まえ、10kW未満出力のスターリング
エンジン発電設備について、安全性が十分に高いため、スターリングエンジン発電設備固有の技術基準を策定するに至り、
“発電用火力設備に関する技術基準を定める省令第73条の2〜第73条の6”に規定されることになった。 |
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| A |
| 杉山 徳義氏・樋口 彰氏講演 | |
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杉山 徳義氏より、今回の電気事業改正とその意味について説明があり、とくにスターリングエンジン発電設備の
技術基準は製品の安全性を確保するための要件を示したものとの説明があった。
つづいて現在入手可能なスターリングエンジンおよびシステム化製品の概要説明があり、制御システムを構築することが
最重要課題である旨を説いた。さらに電気事業法におけるスターリングエンジンの技術基準に適合するためには、
スターリングエンジンを組み込んだ装置(商品・製品)に制御システムを付加するとともに、
最大の危険因子である過熱対策として、熱源温度制御装置・エンジン回転制御(調速装置)・非常停止装置の重要性を強調した。
樋口 彰氏よりは、スターリングエンジンの起動に関する基本知識の説明があった。また現在入手可能なエンジン、
Momoseエンジン及びMicrogenエンジンを例にして、制御システムの系統図例を具体的に説明した。 |
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| B |
| 福本 吉起氏講演 | |
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産業用エネルギーの4割が熱として捨てられている現状を踏まえ、その熱を利用できるシステムとして、
スターリングエンジン、熱電素子、バイナリー発電を挙げ、なかでもスターリングエンジンの可能性について言及した。
とくに工業炉は、小さい物までいれると4万機近くあるなかで中小工業炉にターゲットをあて、そのうち金属熱処理・
アルミ溶解関連分野でのスターリングエンジンの可能性に触れた。現在具体的な設置個所についての調査を行い、
ユーザーの協力のもとに、得られた電力の利用法まで立ち入っての生産現場が受け入れやすい方策を基本に、
実証試験を行うべく検討中であるとの説明であった。
スターリングエンジン発電による工場排熱利用の今後は、とくに工業炉分野では生産設備であることから、
生産の阻害要因とならない機器の開発、なによりもイニシャルコストのハードルが高ければ導入意欲が
わかなく投資回収メリットもないことを十分認識すべきであると強調していた。 |
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| C |
| 齊藤 正倫氏講演 | |
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プロマテリアル社の現状のスターリングエンジンの販売事業として、Microgen1kWエンジンを組み込んだ
システム商品の製品化〜販売を事業化しており、3.5kWマルチガス(バイオガス、温泉ガス)発電システム、
木質ペレットコ−ジェネレーション、もみ殻コージェネレーションについての説明があった。
なおメインのMicrogen1kWスターリングエンジンはこれまで累計約15,000台生産とのこと。
つづいて、東南アジアの市場開拓についての説明があり、カンボジアでの“もみ殻を燃料とする発電”普及のため、
ならびにインドネシア(フオーレンス島)での“ココナツやし殻等を燃料とする無電化地域での発電デモ”
のワークショップ展開をすでに始めているとのことでもあった。
今後の展開の基本として、国内外ともにコストパフォーマンスの高い木質バイオマスボイラー、
及び安い木質燃料(特にペレット)の販売・普及に力を入れ、バイオマスエネルギー市場の裾野を
拡げスターリングエンジン普及のためのインフラ整備を行っていくことを強調していた。 |
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